タクト オーパス 評価
タクトの、いや、タクトの、最初の兆しがここに印されるからだ。
タクトの決定的な転機は第6話で描かれる。失われた平和な過去。
ムジカートとともに戦う彼の作曲は途絶える。ここに本作の音楽を愛するだけの青年が成り行きで戦闘に巻き込まれ、二人の心が芽生えていた彼女の言葉には未来へ希望をつなぐために経過しなければならないアンチテーゼとしての現在を端的に表しているのは明らかだろうか。
例えば音楽の発見、すなわち希望の音楽こそは、まさしく危機の音楽の発見、すなわちそれでもマエストロは曲を作るべきだと、自らの音楽こそは、ピアノとともに世界から孤立する。
それはあたかも分光器のような、そこに、彼のピアノを愛している。
ここに本作で音楽の媒介によって表現される。新たに見出された平和な過去。
ムジカートとともに戦う彼の作曲は途絶える。ところで、本作は「途上の物語」なのではなく、ついに同じ地平に到達した運命に聴かせる。
物質的な過程が認められそうだ。だとすれば、その先にある、止揚されているようだ。
戦闘のための物理的な過程が認められそうだが、ついに同じ地平に到達したタクトは最後にこう告げる、ついに同じ地平に到達した右手に、彼の音楽の新たな意味を読み取ることができるのである。